◆アカーシャの扉〜7〜◆ ―短編―

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 ―7―  

『不明瞭な恋人』


あの時の夢と

酷似した夢の時間の中で

僕の愛した人は何故か

いつも良い意味での「背徳者」」だったようだ。

厳しい宗教圏に生まれつき

確かに名門の育ちの癖に

どういうわけだかそういう慣習を

非道く毛嫌いするトコロがあって


けれどそんな部分が

夢の中の僕を強く惹きつけたような気がする。


―神様なんてイナイ。

居るならば此処に引き吊りだせよ。

そんなモノを信じてたら

この世にある本当の幸福を逃しちまう…―


たまり場だったカフェバーで

皮肉たっぷりに言う姿には

凄艶なまでの力強さと逞しさがあった。


でもある日、その人は僕にコッソリと言った。

―神様がいるなら・自分達を作り上げたこの世界・大自然さ。
偉大な存在なんだよ。途方もなくね。
だから我々如きが引き吊りだせる筈なんぞナイのサ―

今でもこの言葉は僕の中で生きている。

親の築き上げたレールを打ち壊し困難を乗り越え

自らの手で何かを掴もうと咆吼する…

そんな貴方の魂を

僕は芯から愛していたのだと想う。

…でも最後まで貴方の気持ちは 解らずじまいだった。

それとも真実が見抜けないほどに 僕が間抜けだったのだろうか?

貴方は僕を何とも想っていなかったのですか?
それとも…本の少しでも…胸の何処か片隅でも
僕を必要としてくれていたのですか?


貴方は不透明なままの想いをだけを
僕に残して消えていった。



夢のような恋は多分しないけれど

恐らく根の部分の考え方が似た人を

愛するという傾向は

明瞭に明確に

現実の僕に浸透しているようだ。



けれど夢の中の愛しい人は
いつでもこう強く囁くのである。


「地に足をつけて前に進むが良い。

 オマエの生きる場所は
 
 過去にも未来にも現在にも

 此処なのだから」…と。



いつか貴方に巡り会うことがあるなら 

僕はきっと今度こそハッキリさせるだろう。

本の少しでも僕を必要としてくれますか?と。

そうしてきっと伝えたい。

貴方への想いは真実だったのだよ・と。

貴方が新しい何かに向かって進んでいるならきっとついていこう。

例え貴方が全てを忘れていたとしても。





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