◆アカーシャの扉〜2〜◆ ―短編―

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『夢の断片』

…紫色の煙が
資料を山積みにした書斎の上を
体をくねらせながら透明の空気に溶けていく。

僕はドアノブに置いていた手をずらして
そのノブの感触を確かめた。

少しざらついてるのは
メッキがはげてるんだ。

赤茶けたノブの本体が顔を覗かせて
なんだか少しだけ愛おしい。
で、急に用件が有った事を思い出す。

―なんだ、誰もいないのか…―

でもこの煙は、ナニ?
ハハァ、そう。
これは僕の良く知ってる
仕事の仲間が吸ってる
紙巻きの煙だぜ。

葉巻じゃキツすぎてダメなんだとさ。

そう言っていたのを思いだし
思わずにやけると
僕は手に持っていた
ジャケットと帽子を
当たり前のように身につけていく。

ち…ょっとまて。

僕はまだ中学生で

背広のジャケットなんて…

ましてやそろいの帽子なんて…

もってなんかいないはずだぜ?

そこで気が付く。
ここ、どこだ????
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