それ故に、未来を受け止めるが如く 11

モクジモドルススム
「(チクショウ! チクショウ!!)」

声には出さずに自分に対しての憤りを拳にすると、右の太ももへとぶつける。鈍い振動と痛みが膝下まで伝わる。

「下手なズレを増やさない為にも時間は少ないが、その行為で気持ちの切り替えが出来るのならば少しだけ待とう」
「…あ」
「何か?」
「いや、別に(ズレ…)」

苛立ちと混乱する思考の中で辰巳は一筋の何かを見つけた。
そう、男は足を地面に叩きつけたその一瞬の行動でも未来は変化する恐れがあると言っていた。ならば、“蓮爾を殺す”という以外にもう少し違う行動をしたら87年と4ヶ月後にも平和が訪れるというシナリオがあるのではないだろうか。
しかし、この話を持ってきたスーツの男にはその願いは聞き入れてもらえそうにも無さそうだ。直接確認したわけではないが今までの行動でそう感じる。

「やるよ」
「なに!?」
「この刀で、蓮爾を殺せばいいんだろ。いいさ、やるよ」
「本当か! ならば急ごう。あと6分と…いや、少し時間が延びそうだ」
「え?」
「くそ! 奴等、時間操作をしたな。これで未来が変わってしまったらどう責任つけてくれるのだ」

やはりだ─。

スーツの男はほんの少しの行動のズレに敏感だ。
きっと、いや絶対に違うシナリオを見つけてみせる。

「それじゃあ失敗しない為にも、蓮爾討伐までのきちんとしたシナリオを教えてくれ」
「説明をしている時間は無い! 私が後ろからサポートする」
「そんな押し問答してる時間が勿体ねぇ。オレはそこまでバカじゃない。説明を頼む」
「そうか、そこまでの覚悟が出来たというわけか。わかった。さすが私達が選んだ勇者だ。では説明の画面を見せるが一度だけしか時間が無いからな」
「ああ、頭に叩き込むよ」

辰巳はスーツの男が開いたメディアを横から覗き込む。暗転した画面に映るのは二人の顔。画面越しに目が合ったが、スッと逸らした。再び視線を画面へ戻すと、画面上部にタイトルのように書かれた文字が気になった。

「(【World Paradaigm Science】××年、code:#87YQIR4W改造利用計画実行画面…? 何だそれ…利用? オレを利用するってのか?)」
「見えるか?」
「ああ。見える…(そうか…オレは利用されてるんだ)」

そして、画面映りで悟られないように辰巳は口端を軽く上げると、自分の中で得た確信を自信に変え、笑みを漏らした。
モクジモドルススム
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