それ故に、未来を受け止めるが如く 2

モクジモドルススム
「576円になります」

コンビニのサッカー台の上には辰巳が購入した商品が袋に詰められた物と、端には今日行われるイベントのチラシが束になって置かれていた。
チラシには何人もの出演者の顔があり、その中には今日観覧するキッカケとなった後輩である裕樹の顔もあった。それも結構大きめに。
辰巳は身内贔屓も手伝って、嬉しさにチラシを一枚手にして眺める。

「あのーお客様ぁ…」
「あ…」

コンビニの店員は少し困った顔で辰巳へお金を払うよう要求する。気がつくと後には客が自分の他に3人並んでいた。

「すんません」

慌ててチラシを脇に挟み、サイフを開く。本当は小銭がたまっていたが、焦ってしまった為、千円札をポンと出してオツリを受け取る。増えてしまった小銭の収容に悩みながらコンビニの自動扉をくぐると、店内へ入ってくる客と肩がぶつかった。

「あっ…! すんません!」
「……」
「(怒ったかな?)」

男の表情を伺うように覗くと、何だか不思議な雰囲気を持った男だった。
奇抜な服だとか、髪型だとか、そういった何かが特別という特徴は無いのだが、一見して不思議と見て取れるのは間違いない。そういう空気感を感じる。

「code:#87YQIR4W。古谷辰巳…だね?」
「へ…?」
「………」
「(何で俺の名前?)えっと…」
「その驚き方、人違いならばすぐに否定するだろう。無いという事は、相違無しでいいか?」
「確かに俺は古谷辰巳ですけど、それを何であなたが…」
「私と君は知人ではない。このレコーダーに書いてある通りのまま読み上げただけだからな」
「そのレコーダーって何ですか!?」
「該当人物ならば、私についてきてくれたまえ」

謎の男は強制したわけではないが絶対的な雰囲気を残して、辰巳から背を向ける。このまま無視してしまってもいいと思ったが、何故か付いていかなければならない気がして、謎の男の後を追った。

モクジモドルススム
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