◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―20:「繋がる心」 ―  

あの恐怖の権化である巨大な発光体が
某国の片隅で突然消滅したと言うNEWSを、
是平老人は偶然知った。

半年に一度、栄養食を配達して来る男が転んで怪我をしたと騒ぐので、
しぶしぶ研究所に招いて手当てをしてやった時、
そのおしゃべりな配達員は興奮しながら目を輝かせ、
自分の事の様に、嬉しそうにその出来事を語ったのである。

「全く若いモンと言うかオマエさんの気が知れんよ。
老い先短いこの老いぼれにそんな話をして…
世界が変わる訳じゃあるまいに。」

是平老人は肩をすくめて配達員が置いた
栄養食とNEWSペーパーを横目に溜息をつく。

この後世界はどうなるんだろう。
セイの存在は皮肉にも世界を協力させ、結びつけた。
セイの存在はある意味“奇跡”だったのではないだろうか?
脅威が去った今、もしかしたらまた人間達は
愚かにも奪い合い、殺し合い、化かし合い、騙し合うのかも知れない。
きっと戦争も始めるんだろう。
何万の命が無作為に消されていくのだろう。


だが…いつだって救いの手となる“希望”は
どこかに一つ位、転がっていたり隠れていたりするものさ。

それにしても、本来なら外界から閉ざされている筈のこの場所へ、
そんな話が飛び込んできたのはやはりただの偶然なのだろうか?

是平老人は見えないを懐かしむかの様に天井を見上げる。

その背中は…本の少し嬉しそうだった。


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