◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―18:「目覚めの時」 ―  

最初、彼の耳に飛び込んできたのは、“声”だった。

やさしく、あたたかな…聞き覚えのある声…。
その声ともうヒトツ、何かの声がする。
鳥のさえずりの様だな、と感じた。

彼はそっと目を開ける。

…真っ青な空。明るい太陽。
ああ、自分は仰向けに横たわっているんだな…と、認識した。
その時、自分の左脇に誰かの気配を感じて、
顔と目を少しだけそちらへ向けた。
見覚えのある、少年の様な面立ちが息を呑み、少し微笑んで、口を開く。

「…セイ…?青!!」

―せ…い…?…?…

「セイ、俺だ、ソラだ。解るか?」
ソラ… 
ああ、そうだ、彼は…

「ソラ…?」
ソラは嬉しそうに頷く。目が潤んでいる。

彼は体に違和感を覚えて、生命維持装置から手を上へ向かって伸ばし…
そこで息を呑んだ。

「何故!?」

起き上がる。

温く滑る様な溶液。息を大きく吸うと、色々な匂いが飛び込んできて、咳き込んだ。

「大丈夫!?セイ!?」
ソラは慌てて彼に手を触れた。温かく“やわらか”な手の平の感触。
彼はゆっくりと自分の体をみる。日に焼けていない色白の皮膚…。
慌てて自分の体をさする。保護溶液のせいで滑るが、柔らかい…。
頭に手をやる。髪の毛?そんな…まさか…

「ソラ…?私は…どうして…一体どうして」

「え?」

その喋り方にソラは違和感を覚えた。

セイは私とは言わない。


「ソラ、私は」


二人の目が合う。

「青だ。」

その言葉にソラの唇が震えた。

「青…なの…?」

セイの姿をした青が困惑した表情で頷く。
何が一体どうして…?


鳥が鳴きながら空を飛んでいく。
心地良い風が、二人の間をすりぬけ、去っていった。


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