◆アオノニゴウ◆ ―短編―

モドル | ススム | モクジ

 ―16:「消失と失望」 ―  

―所詮オマエ ハ 産ミノ 親ノ 
俺ニハ 敵ワナイ!!
ロボット工学三原則、
忘レタ訳ジャナイダロウ!?


青の人工頭脳に猛烈なスピードでその原則が流れていく。

『人間に危害を加えてはならない』

だが、あなたはちがう。
わたしを創造したマスターはもう存在しない。

人間に危害を加える…私を壊そうとする危険な存在。

私は貴方を止める。
止めなければならない。
止めたい。

あなたの苦しみを止めたいんだ。


………………………………

………輪を広げ、ほとばしる輝き。

……目が眩んで、とても立っていられない。

幾重にも幾重にも、光りの輪は広がって世界を包み込んだ。

涙が溢れる。目が痛い。悲しい。何が何だか解らず
頭を抱くようにして目を閉じてしゃがみ込んだ。

―1分

―2分

―3分

ガン、ガラン… ガシャン… ゴオォン…
何かが上から降って来て無残にも地面に叩きつけられる音がする。

ソラは震えながら顔をあげて、周囲をみた。

落下してくるのは、多分セイの破壊兵器の残骸だろう。
…青の部品もあるのだろうか。
バラバラになって。

フラフラとその周囲を彷徨い歩く。
目的も無く。目的も無く?
いや、違う。解っていた。探しているんだ。

「青」…「彼」の事を。

ガン、ガラン… ガシャン… ゴオォン………

ドサッ


明らかに今までのモノと違う音がした。
その音のする方向へ慌てて体を向ける。

そこには 青の胸から上が横たわっていた。

穏やかな顔で目を閉じている。

あの日、箱を開けた時と同じ様に目からオイルが涙の様に流れていた。

僅かな望みが絶望に変わる。

…一気に悲しみが込み上げて来る。

ごめん。ごめんね

彼はその胸に青を抱きしめた。

こんな状況では、生身のセイは絶対に生きてなどいないだろう。
結局二人共助けられなかったんだ…俺は…
(どうするかなんて本当に考えてたのか?)
こんな結末、辛すぎる。
(最悪の事態を予期してなかったのか?
説得出来ると過信して自惚れてたんじゃないのか?)
それでも俺に生きろと言うのか?
(死ねるモンなら死んでみろよ。そんな勇気も無かった癖に!)

ぐるぐると自問自答が繰り返され、ソラは自分の無能さを呪った。

莫迦ってこう言う奴の事を言うんだ。

―…立っていられなかった。

もう涙も出てこなかった。

上を見上げるとポカンと晴れ渡った何にもない空が青々と広がっている。

周囲に落下して来る音はどんどん減っていく。

この音がしなくなるのと同時に自分も消えて無くなりたい。

疲れた。



彼はがっくりとうなだれた。


「え…?」

何だ今のは!?

モドル | ススム | モクジ
Copyright (c) SPACE AGE SODA/犬神博士 All rights reserved.