◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―13:「届く声」 ―  

―…それは、熱い声だった。
何度も何度も自分の中の芯まで染み渡り、激しく揺さぶり覚醒を促す。
聞き覚えのある声…。
時に暖かく、時にやわらかにも関わらず力強さを持ってして。

知っている、私はこの声を知っている。
私を呼ぶ声。

―アオ、あお、青…

そう、私は、「青」
その私と言う“存在”を凌駕して支配しようとするのは…
「マスター・セイ」
そして、この呼ぶ声は…私の原動力となり、
マスターの意識の支配を遮断したその声の主は…

「ソラ…!!」

ソラはその声にハッとして青の目をみつめた。
アオの目に、彼の意識の色彩の輪が急速に広がり、
浸透して行くのを見て取って、安堵して彼の名を呼んだ。

「青…!青ッ・良かった…」

青は小さく頷くとソラの前に立ちはだかり上空のかつての主人を見上げた。
物凄い質量の信号を無茶な形で送られたせいか、
微細な電子回路の一部が軋む。
人間だったらコレを「痛い」、と表現するのかも知れない。


「久し振りにあったら随分お姿が変わっておられて驚きました…マスター。」

―フン、 見タ目ナドハ 問題デハナイ

大音響が周囲を包み込む。鐘の音が真上で鳴り響くのにそっくりだ。

別に青の口を借りなくたってこうして会話の術がある。
ソラはセイのそんなやり方が悲しかった。

―随分 生意気ナ 口ガ キケル様ニナッタネ… 
大分 学習 シタミタイ ジャナイカ…
P−No.key.零号機…カ …俺ノ 二号 俺ノレプリカント


ソレを聞いて、ソラは激しく首を横に振り
「ち・が・ちがう、違…うッ!青はッ…セイ、君の、
レ・レプリカントなんかじゃ、ナイ…ッ。」
と叫んだ。

青の人工の心臓が、ドクン、と脈打った。

―わたしは ますたー の れぷりかんと じゃ ない?????

「青は、魂があるんだ、心があるんだッ…。人間じゃないかも知れないけど。
でも…生きてるんだ。セイ、解るだろ、君だって、もぅ、解ってるだろ!?」

発光体が急にゴウ、と唸って空気を震動させた。

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