◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―07:「復活の鍵」 ―  

「そして君は火柱の異変の日から約7ヶ月の間に
全ての箱を探し出したと言う訳か。」
「そして今日、その最後の1パーツを見つけ出しました。」
「何と…容易な事ではなかったろうに…。」
是平氏は半ば呆れた様に首を振った。
「大体幾ら君が男でも、個々のパーツは結構重い。
良く暴徒に見つからずにここまで運んでこられたモンだ。」
「現在、人々がしている苦労からしてみれば、
セイが人々から受けた屈辱から比べれば、
俺の苦労など大したものじゃありません。それより…」
彼は是平氏の目を真正面から見つめた。
セイを止めに行く手立てが欲しいんです。
それには…だからどうか、彼を…修復して下さい。
ソラは作業台に乗せられた、P−No.key.零号機の顔を撫ぜる。
「俺は是平博士、貴方しか知らないんです。
セイが唯一信頼していたと言う貴方しか。」

…是平 陶磁 博士… 唯一セイが信頼し、協力を求めていた、セイの師匠。
だからこそ…

「P−No.key.零号機を修復出来るのは貴方しかいない。」

強い意志の宿った瞳だ。
是平氏はそう想った。



この子なら、愛弟子のセイの暴走を止められるかも知れない。
僅かな可能性だが、賭けてみる価値はあるのではないだろうか。


ソラが訪れてから既に6時間が経過していた。

是平氏は天井を仰ぎ見る。
外界から全て遮断されたこの地下の研究室には、俗世での出来事は何一つ響いてこない。
例え核戦争が起きようが、天変地異が起ころうが、是平氏には本来関係ナイ事だった。
彼は自分に必要な生命維持装置だけを毎日メンテナンスし続けていれば満足だった。

ソラが訪れる本の6時間前までは。

―愛弟子のセイは何故、私の居場所をこの子にだけ話したのだろう。
―そしてこのソラは何故、私を無作為に信じるのか。


―セイはこの子を私の元に遣わして、どうしたかったんだ―?

是平氏は分厚い眼鏡の奥から自分の手の平を見つめた。
硬くひび割れた老人の手。先月80歳を迎えた。
…嗚呼、本当は世の中の事なぞ老い先短い私にとってはどうでも良い事。
俗世から離れ、この場所で一人朽ち果てられればそれでいい。
だが…

「引き受けよう。」

ソラはその目を見開いた。
顔が驚きと喜びの入り混じった色に頬を染めて。


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