◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―06:「闇の廃都、銀の箱」―  

それから7日目の事。

各地の上空を、巨大な青い発光体が駆け巡り、
恐ろしい火柱を落として行くと言うNEWSが報じられた。
その火柱が立てば、そこには焦土が残るだけ。

後には何も残らない。

人々は恐れおののいた。
火柱は地殻に作用するらしく、巨大な地震や、津波や、
噴火を引き起こし、各地を襲った。
人々は更に恐怖と混乱の渦へと突き落されたのだ。
ソラにはそれの正体がなんなのかすぐに解った。

あれは“セイ”に違いない。

不幸中の幸いか…ソラの住んでいる場所には
火柱は落ちず他の場所からの余波もなかった。
だが、人々は混乱し、避難所へ向けて逃げ惑い右往左往を始めた。
ソラはその波に逆らって、エアボードに乗ってセイの研究室へ向かった。

セイの研究室は手酷く荒らされ、色々なモノが滅茶苦茶になっていた。
暴徒の仕業だろう。ソラはその瓦礫の中を引っ掻き回した。
自分でも何をしているのかよく解らない。だがそうせずにはいられなかった。
そこで銀色に輝く“箱”を見つけた。
よく盗まれたり、壊されたりしなかったな、と想ったがその理由はすぐに解った。
とても頑丈でそんじょそこらの器具では壊せそうもない。
かなり大きいが、継ぎ目がどこにも見当たらない。
電子式のプレートが一枚貼り付けてあるだけだ。
中身を盗む為にはその場で開けるか、運び出さなければ
ならないだろうが、開け方は解らないし、破壊しようにも頑丈だし、
持って行こうにも大混乱している街でこんな物を運ぶのはリスクが大き過ぎる。
「セイ…何がしたかったんだよ…?」ソラは途方に暮れてその場に座り込んだ。
その時。
電子プレートにソラの指が触れた。ピッと微かな音がして
プレートが美しい深い蒼に染まり、発光する。
指紋認証装置が着いていたようだ。…そこにはこう書かれていた。

「Please write the my name.My name is BLUE No.2」

ソラの記憶で何かがひらめいた。
そういえば以前彼はこんな事を言っていた。

『俺の名前はセイだろ。セイって書くだろ。
だから俺そっくりのコイツは“青の二号”ってトコだな。
何かあった時の暗号はカタカナで“アオノニゴウ”にしとこう。』

『だから罰として俺の二号の“零”の化けの皮を剥いで、
五つにするからね!閉じ込めちゃうからね!



「アオノ…ニゴウ…」そうか、この中には
「P−No.key.零号機、君か!!!」

ソラは人差し指で、プレートに必死に書き込んだ。
―アオノニゴウ― と。

ピピー…、と微かな電子音が静かな部屋に鳴り響き、
銀の箱の蓋がバクン、と開く…

箱の中には人工皮膚を剥がされたP−No.key.零号機の、
真っ青なボディが収められていた。



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