◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―04:「過ち」―  

「セイは、彼…」ソラは首を見つめる。
「P−No.key.零号機をベースにして、アンドロイドを大量生産した。」
――
生産されたP−No.key.達は、全員スキンヘッド,
ボディには人工皮膚を被せず元々のカラーである青色のままにされた。
大国を相手に軍事作業用アンドロイドとしてP−No.key.達を売るのが
ある意味でセイの人生最大の目的と目標だったのである。

当時セイは歳若くして優秀な機械工学の権威の称号を得ていた。
色々な機関が彼の才能と技術を喉から手が出る程欲しがった事もある。
だから各国の政府、研究所、政府要人にも顔が利いたのだろう。
…P−No.key.達の販売は信じられない位に上手く運んだ。
――
「セイは俺に言ったんです。
“世界平和にコイツは役立つんだ、
人間が、兵士となって、もう戦場に行かなくて済むんだから”
、と。」
――
…だが現実は違った。

確かに人間の兵士達はいなくなった。
だが、彼の作成したアンドロイド達が人間に代わって
戦争をする様に仕向けられたのだ。
各国は馬鹿馬鹿しい程アンドロイド達を粗末に扱った。
ロボット工学三原則(※)でアンドロイド達は人を傷つける行為が出来ない。
だからとある国は、アンドロイドの回路を止めた時に、
彼の体に核爆弾を仕掛け他国の滅亡を計った。
又とある国は、アンドロイドに嘘の情報を組み込んだり、
遠隔操作して、設定した場所を破壊し、特定の人物を殺害する様に仕向け、
そこから他国同士を争わせる卑怯な手段を取ったりした。

…人命を救う所か、多くの犠牲者が出てしまった事が原因で、
各国の人々の非難は製作者のセイに向けられた。
セイは嘆き哀しみ、人々に自分の胸の内を必死に訴えた。

「俺が最初に望んだのは平和活動だった筈だ。
地雷を撤去したり、人間の手ではどうにも出来ない
危険な場所での作業をさせる為のモノだった筈だ。
爆薬も核も使う人間によって、凶器となる。
…俺は、彼等を使うのが人間だと言う事をすっかり忘れていた。
ノーベルよ、アインシュタインよ、俺は貴方達がアレ程
恐れていた事を繰り返してしまったのか!?」

だがその叫びは、「悪の機械を生み出す金の亡者」とか、
「自分が助かる為の、自分勝手で卑劣な人間」とか、
「他人に罪を擦り付ける悪人の権化」と言うレッテルで
片付けられてしまった。人は、大きな流れに流されてしまう生き物だ。
世の中の流れはどんどんセイにとって不利になっていった。

そんな日々が続いた、ある酷い土砂降りの夜…。

―セイの恋人が、殺された。むごたらしい死だったと言う。

「世界を混乱に陥れたお前への報復だ」
禍々しいメッセージの書かれたその呪われたメモを握り締め、
セイはソラの元を訪れた。


※ロボット工学三原則…SF作家、アイザック・アシモフが
1950年に著作した「我はロボット I, Robot 」の中で提唱した、「ロボットにおける人工知能の倫理観」の事。
第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。
又、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。
ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合、これに従う必要は無い。
第三条:ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、
自己を守らなければならない。
(小尾芙佐訳 1983年年 早川書房
「われはロボット」5頁より引用)―…と言うもの。
数多くの作家達に影響を与えただけでなく、
現在のロボット工学にも少なからず影響を与えていると言っても過言ではないと思う。

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