◆アオノニゴウ◆ ―短編―

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 ―03:「セイとP−No.key.零号機」―  

「ソラ、コッチをみろよ。」

デスクに座って、パソコンをいじっていたソラは、その声に振り向く。
真後にセイが直立不動で立っていた。
「セイ、どうしたの?何か用?」
真顔のセイを見て、ソラは怪訝そうに尋ねた。
ソラには真剣に何かをしてると物音にも気付かなくなる癖がある。
だから彼が勝手に家に入って来て脅かされるのはいつもの事だ。
…が、なんだかこの日は少し様子がおかしかった。
「…セイ?」
椅子から立ち上がりセイに近寄る。セイの身長は高い。
間近まで行くと顔を見上げる格好になる。

…セイは顔と目を本の少しだけ動かして、ソラを見下ろした。
―やっぱり何かがオカシイ…。 
いつものセイと何かが違う。
ソラはセイの腕に触れようと右手を伸ばした。
その時。けたたましい笑い声がクローゼットから響き出す。
―…セイの声?
ソラは眉根を寄せてそちらに目を向けた。
目の前のセイも体を捻ってそちらをみる。
二人の視線が扉へ注がれたと同時に、
クローゼットの扉が開いて中から勢いよく男が飛び出して来た。

セイ!?」ソラは驚いて声を上げた。
一体どう言うコトなの!?

“セイ”と呼ばれたクローゼットの男は相変わらず楽しそうに笑って、
手の平をひらひらさせながら言う。
「流石のソラでも解らなかったか!そいつは俺じゃないんだよ。」
ソラは目を見開いて自分の目の前の“セイジ”を見る。
「オイ、ソラに自己紹介しろよ。」
“セイ”がもう一人の“セイ”の右脇に立ち、肘でこづいた。
こづかれた方の“セイ”は一度瞬きをすると静かに
…そして穏やかな、セイそっくりの声で言った。

P−No.key.零号機(ピーナンバー.ケーイーワイ.ゼロゴウキ)です。
…宜しくお願い致します。」
「まさか…」ソラは息を呑んだ。
「そうだ。」セイはニヤリと顔を歪める様にして笑う。
「出来たんだよ、アンドロイドが。完璧なアンドロイドがさ!!」
「だからって…何もアンタそっくりにする必要…」
ソラは呆れた様にアンドロイド…“P−No.key.零号機”をもう一度見上げた。
彼は相変わらず静かに、そして穏やかに立っている。

それは、P−No.key.零号機のモデルになったセイとは
呆れる程、対照的な雰囲気だった。

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