旭日昇天銀狐

第4章−3 急転直下

一堯のBMWに乗り込むと、二人は地下駐車場特有の急な坂道を登って地上へ向う。
出口少し前の付近に差し掛かった時、暗闇を照らし出すその日差しの眩しさに朝彦は目を細めた。色素の薄い朝彦にとって日の光は痛いくらい強く感じる。

三回目に瞬きをした所で朝彦は突然目を見開いた。
突如背中に悪寒を感じたのだ。

それも尋常ではない強さのモノだ。
今までの人生でそう感じる事がなかった程のレベルの……。

二人の乗る車が完全に地上に出た所で、逆に地下駐車場へ下る車があった。
朝彦の心臓が異常な程、早鐘を打つ。
対向車は美しく磨かれた黒光りするセンチュリー。
運転手はサングラスの生真面目そうな中年男性。
……その、後部座席の窓がスッと少しだけ開いた。
朝彦とその後部座席の男の目が合う。その目は鋭く丸で猛禽類を思わせた。

雷に打たれた様な直感で脳裏に言葉が閃く。

――あの男が本当の……敵か !?

その朝彦の思考と偶然折り重なる様に一堯が急ブレーキを踏んだ。

「お…わっ! なんだどうしたんだよっ」

前のめりになりかけた朝彦の身体を、一堯は左手で支えながら背後を振り向いて、言った。

「今の擦れ違った車ッ…後部座席にいたのって……」
「 !!  なんだ、オイ ! …今の野郎を知ってるのか、カズ ?! 」
「あいつ……日本財界の黒幕の一人って言われてる…神鷹松之介ですよ、師匠! 亀山の奴あんなのとまで付き合いあんのかよ…驚いた… 」


朝彦は絶句するしかなかった。



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