旭日昇天銀狐

第4章−2 急転直下

複雑な作りになっている会館の脇道の階段を下って、駐車場につく。やはり地下は比較的外よりもひんやりしていた。蛍光灯に照らされているにも関わらずどことなく陰気な感じが更に冷気を強くするのかも知れない、と朝彦はいつも思う。

地下駐車場は結構な広さがあり、150台近く車を止められる様だ。

朝彦が車に向かって一直線に歩いていくのに反して一尭はキョロキョロしながら何かを探している。それに気付いた朝彦は、足を止め首を傾げながら言った。

「カズ…お前なにを探してるんだ?」
「えぇと…あのですね」

一尭は頭を掻きながら奥を指差した。

「あの奥見えます? 」

朝彦はその指先が示す方を見る。

その一角は、黄色と黒の制止棒が掛かっており車の出入りを制限する為のカードリーダーらしきものがある。朝彦はそれが一目で関係者のみの駐車場の入り口と理解した。だが一尭が指差しているのは、更に奥の全面ガラス張りの扉だ。蛍光灯がやけに煌々と照っている。

「あれが何だ? 」
「いや、ホラ“関係者以外の者の入室はご遠慮下さい”て書いてあるじゃないッスか…あの扉」
「あぁ、で? 」
「あそこから関係者は入れるってワケですが…問題はこの先どうしたらいいかですよね」

腕組みをして「うぅ」と唸る一堯を見て朝彦はニヤリと笑う。

「俺、いいもの持ってるぜ」

朝彦はカードケースからスッと一枚の名刺を出した。ソコには明朝体で“法皇出版 桐生ミサキ”と書かれている。

「後、お前デジカメ持ってきてただろ? 結構良さげなヤツ」

ええ、と答えて一堯は自分の車に向かって走り出す。朝彦はその見事な走りのラインをゆっくり歩いて追っていった。
一堯はトランクを開けて、鍵の掛かった銀色のボックスから一眼レフのデジカメを取り出すと師匠にそれをみせながら問う。

「…で、コレどうするんですか? 」
「俺がミサキ、お前はカメラマン。二人は今日取材に来ました…“事前に亀山さんに許可を頂いていませんでしたが取材の方、OK取れるかお伺いして頂けませんかー”…この筋書きでどーよ? 少なくともあの入り口には辿り着ける可能性あるぜ? 」
「うぉおッ… 」

一堯は思わず笑って呆れたように頭を掻いた。
なんと言うか、しょっちゅう“悪餓鬼みたいだ”等と称される事がある一堯と違って、普段キザな男前を気取ろうとする朝彦にこう言う子供じみた一面がるのは彼にとって結構ツボなのだ。一緒にいて全く飽きない妙なスリルが彼にはある。

「よっしゃ! ほんじゃ一丁行きますか! 師匠!!」

朝彦の不敵な微笑をGOサインに二人は関係者入り口に向った。


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