GLOW UP!

第2章 高山亘【少年との出会い1-2】

高山が例の場所に到着すると、情報通り少年達がチラホラ見える。いきなり顔を出しても警戒するか、方々に散らばってしまうだろうから意味が無いと思い、柱の影から様子を見る事にした。

「いち、にー、さん…ザッと数えて十人弱て所か」

まだ何も起きる気配は感じられない。時計を見ると、時間的にもすぐに家に帰すよう指導しなくてもいい時間だ。高山は暇つぶしにのんびりと煙草を口にくわえた。

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二本目の煙草が吸い終わる頃、背後から叫び声が聞こえ、同時に何かが地面に叩きつけられるような鈍い音が聞こえた。
驚いて柱から飛び出すと、数人の少年が走り去って行く。そのうちの一人と肩がぶつかり、少年は前転するようにもんどりうって転んだ。

「おい! コラ、お前等!」

転んだ少年を助け起こしながら逃げて行く奴らを呼び止めるが、その声は届かず、遠く走り去ってしまった。

「しくじったなぁ…証人が一人か」
「うわぁ…ごめんなさいっ! 俺は言われてからかっただけで…」
「とりあえず落ち着け」
「落ち着けって! わ…う、後ろ!」
「ん?」

ヒュンッと高山の耳近くから風を切る音が聞こえ、一筋の影を感じた。
条件反射で側頭部へ腕を添えると、ドスンと鈍い衝撃と痺れが上腕へ伝わった。ヤバいと感じた高山は、体を翻して相手を確認する。しかし、その間も許されず次の攻撃が高山を襲った。

「うわっ…!」

左手に抱えていた少年を背後に隠しながら数歩後ずさる。腕で防御しながら見た視界の先には弧を描くように流れる足先が見えた。

「この…! どんな野郎だ!?」

足が地に着いた瞬間に見えた姿は確かに少年だった。しかし普通の少年とは何か違う雰囲気を感じる。何だろうか、瞬間的だから詳しくは観察出来ない。だが、グスグスしていたら自分までのされてしまいそうなのは間違いない。あの蹴りはそれを予感させるものだった。
高山は体を丸めるようにして対象物へ突っ込む。ガツッと当たったのは対象物の肩か─。相手が怯んだところで腕を捕まえて関節を決めてやろうとするが、少年は地面に手をつかないバック宙をすると高山から距離を置く。そして休まず飛び出してきたのは足だった。

「うおっ!」

高山は面倒くさいことが嫌いで尚且つ“金”が大好きな男だ。だから常に簡単に金を稼げないかと頭をめぐらせている。しかし、それ以上に本来は実直で真面目な男なのも事実。高山の仕事ぶりや頭脳を考えると、ノンキャリアでさえなければ、今頃とっくに課長の位置にいただろう。それぐらい仕事も出来たし、周囲から期待と信頼もされていた。それは警察学校の時から習い、今でも訓練に参加している逮捕術にも現れていた。

「こちとらガキにやられるような訓練は受けてねぇんだよ!」

ジャケットのポケットに手を入れ、備えてあった特殊警棒へ手を伸ばす。利き手に取り、下へ振り下ろすと僅か15センチ弱の棒が30センチ程の警棒へと変化した。
それを盾にし、向かってくる足を横に払う。次に威嚇するように縦横無尽に警棒を振り回して相手を柱側へと詰め寄った。

「オジサン…何?」

相手は攻撃をやめてポツリと話した。
高山にやられそうだから攻撃をやめた様子ではない。まるで戦う意味が無いと理解したから手を出さないといった感じだ。

「なんだオマェ…ガキか?」
「………悪い?」

殺気とも違うゾッとした狂気―。
覇気が無いとかではない。この世の者ではないような冷たい空気が高山の背中を這う。それは少年の見た目も関係していた。灰色と銀の中間色の髪に、薄い赤茶の瞳。まともに見ると吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥る。


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