GLOW UP!

第1章 北薗崇【ギャンブル3-5】

それを見た周りのギャラリー達が何か面白そうな事でも始まるのかと期待し、やいのやいのと囃し立て始めた。

「俺らはなぁ、タマ張ってここにいんだよ! たかが遊びで片付けられちゃバカにされたってもんだ! なぁ、お前らよ」
「まいったな…」
「おいやめないか! お前達もやめろ!」

多少の揉め事は付き物。認識している黒服も、しつこい男の行動にまずいと感じたか腕を掴んで制止する。しかしその手さえも振り払って、男は北薗へ接近してきた。

「きさまぁ、ぶんなぐるぞ」
「ねぇ…グダグダしてないで早くしてくれないかな?」
「あ?」

周囲の者が皆、声のした方向を一斉に振り向く。北薗もそれにならって振り向くと、目線よりかなり下の位置に少年がいた。ジャージの色、体格を考えるとさっき気になった控え室の選手だ。

「え…?」

年の頃は12〜3歳だろうか、幼げな声に出来上がっていない体、それに北薗が尚驚いたのは外見的特徴。白髪とまではいかないが、灰色と銀の中間色の光る髪に、血の流れを感じさせないような白い肌―。
そして真っ直ぐに見据えた瞳は明るい茶色…いや光りの加減では赤に見えるという、おおよそ一般人とは違う姿だったからだ。

「早く初めてくれないとアップしたものが冷めちまうんだけど…」
「あ〜ん? 何だガキが」
「……」
「黙ってやがってバカにする気か!?」
「やめないか! 上に報告して出禁にするぞ!」

北薗に代わり少年が槍玉に上がりそうなのを黒服が止める。
さすがにヤバいと思ったのか、男は舌打ちをすると、ブツブツ文句をいいながらその場から去っていった。

「さぁ、あなたも早く投票をして下さい。早く試合を始めたいんだ」
「あ、はい…」

結局おかしなゴタゴタに巻き込まれ、システムの充分な説明を受けられないまま、試合が始まる運びになった。
面倒くさい所に来てしまったものだとため息をつくと、さっきまで向かいにいた少年が声をかけてきた。

「オジサン…」
「オジ…ああ、さっきはありがとう」
「別にオジサンを助けたわけじゃないけど」
「そっか。それでも助かったよ」

照れ隠しにボールペンで顔をポリポリと掻いていると、少年はスッと手を伸ばしてそのボールペンを奪う。そして、北薗が手にしていた用紙に、対戦者番号を勝手に書き込んでしまった。

「あ…」
「決まってないんでしょ? もう時間が無いよ」
「そりゃそうだけど…これは…」
「儲けさせてあげられるかはどうかは別として、オジサン俺に賭けてみなよ」
「えっ…!?」
「大穴だって言うんでしょ? そうだね。だって対戦経験無い上にこんなガキ相手に誰も賭けないでしょ」
「て事は…」
「そ。登録選手ってわけ」

驚いて声が出なかった。


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