WONDER WOLF WORLD

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  瀝青色の我が行路  

コボルトの蒼さを含んで
夜が 艶や〈あでや〉かに 艶や〈つやや〉かに
冷笑するのです

ドヴェルグはその奥に潜んで
その夜に切なそうに もどかしそうに
溜息をつくのです

銀色の月は今夜も丸い雲の向こうで
シャラン・シャランの音を立て 化粧〈けわい〉するのです

痛み灼けつくような 甘く疼くアナタの音は
遠い昔に海を渡ってこの地に飛来し
長きに渡って血を紡ぎ再び私と巡りあったのです

壊れそうなこの魂の何処にそんな熱情が残っていたのやら

果たして 儚くも終え〈ついえ〉た小さな光の粒達は
向こう側から川を渡ってこちら側へとやってきて囁くのです。

誘われて行き着く先など誰にも解りはしないのですが
この意外にも爽やかな闇の風に 
私はときめきを隠しきれないのです。

愛しむべき者達が今宵も澄んだ魂で
私に秘文〈ひもん〉を復唱せよと
美しい瀝青の底から手招きするのです。

ホラ、また誰かが私の中に入り込む扉をノックしている。
もう入り込む余地なんて無いはハズだったのに。
私はこの波動に惹かれずにはいられない。

何故か瀝青の闇の奥に置いて来たはずの
古い記憶の断片が甦るようで
そらそらと胸が沸き立ち恐ろしいのです。

もしかしてアナタが“それ”なのでは無いかと
裏切られるような気持と裏腹に
有り得ない期待と不安に押し潰されそうなのです。


◆2003.8.25◆
−妖精の声に導かれて−
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