WONDER WOLF WORLD

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  危険と知りながら  

人は危険な何かに惹かれてしまうモノなのかも知れません。

僕は、15歳の時からずっと探している人がおりました。
その人は、時折、僕の眠る夢に現れては、
その哀しげな眼差しを微笑みに変えて佇んでおりました。
柔らかで低く澄んだ囁くような・呟くような声は
何処か痛々しく、けれど、とても心地良いものでした。
そう、その人は僕の中で燦然と輝く光を放って、
僕の瞼の裏に焼きつき、耳の奥と胸に、
金銀に光る楔を打ち込んで
その記憶を留めさせ、忘却の彼方へ追いやりはしませんでした。

気が付く前に…既に僕は…貴方の虜だったのです。
僕は探しました。

街の中で。 学校で。 図書館で。 デパートで。
ライブハウスで。公園で。 喫茶店で。 山で。海で。

行き交う人の群の中で目を凝らし、
必死にその人の影を探しました。
ですが、何年経ても、探してみても、その人は見つからず
既に探すのを諦め始め、その人に何処か似た人を
好きになっては何度も痛い目をみて、
精も魂も尽きかけたその時に、
まさかのように、僕の目の前にその人は現れました。
僕からは、随分遠い場所におりました。
手を伸ばしても届かないような。…そんな場所。
ならばどうしたらいいのだろう?

壊せばいい・今までの自分、何もかも。
少しでも貴方の傍に行けるように。
何もかも・壊せばいい。
危険と知りながら、それでも僕は行く。
本の少しでもいい。
貴方の傍に行く、ただそれだけの為に。
愚かな夢だと解っていながら、
この想いはきっと未来永劫止まらない。

僕の魂は、ずっと貴方を呼んでいたのだから。
僕の魂は、ずっと貴方を探していたのだから。

危険と知りながら、僕の夢はただ 
ひたすらにソコへ向かって流れて行くのです


─幸も不幸も紙一重─
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