金の吐息/キンノトイキ

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  飢える  

僕は本当の『飢え』と言う物を
体験したことはない。

『飢え』とは本来
食物がなくなり空腹に
耐えられなくなった状態を
さすわけだから
こんな風にいうのは
大変失礼にあたる気がするのだが
『飢え』という言葉を引用して
今の僕の状態を説明するのなら

僕は今、大変『音』に『飢え』ている。

まるで深いブラックホールの様なモノが
胸のどこかにヒトツ口を黒々と開けていて
渦を巻きながら
聴く音、聴く音を全ておいしそうに
呑みこんでいってしまいうのだ。

底なしだ。

黒い口の中には何故か僕もいて
必死に外に向かって
ゆっくりと回転しながら
堕ちていっている事を伝えようと、
必死に歌うのだけれど、

歌っても、歌ってもそれは何らかの
要求へと化していき、

全部高い天に呑み込まれていってしまう。

見えなくなっていれば諦めもつきそうな
空の色が余りにも美しく妖艶に光るので
胸の奥から柔らかく痛むような…
きゅうっと絞られる様な感覚を覚えながら
なおも僕は手を伸ばし
外部から吸い込まれてくる音と
外部へ放とうとする音の狭間で
くらくらと揺れている。

最近そんなイメージが頭から離れない。

昨夜、あまりにも素晴らしい成長をしたと
強く感じたアーティストに
KISSをする夢を見た。

敬意なのか。
愛しさなのか。

否。
多分、僕の心の飢餓を
強く訴えている気がしてならない。

それにしてもこの穴は深すぎる。


◆2003. 1.15◆
−今(2003.12現在)はちと変化した(苦笑)−
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