金の吐息/キンノトイキ

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  会うべきか会わざるべきか  

ソコまで深刻なコトじゃない。

会おうか会うまいか
考えるだけのコトだ。

…それなのに。

我が古き楔の弟よ。
君のことを思わなかった日は
一度だってない。

折に触れ思い出し、
食事はちゃんと取っているだろうか、だとか
神経の細い君が仕事で受けた傷をちゃんと
癒せているだろうか、だとか...。

弟よ。
君のくれた手紙から
僕は何を読みとれば良いのだろう。

僕の許しの許容範囲の度量が少なかったのと
君がその時自ら進んで背負った重荷から生まれた
2人の溝。

何を言っても聞く耳を持たなかった
あの日の自暴自棄な君。
自分だけでなく、
僕までも信じられなくなっていたネ。

最後のコールを切った後
僕はやりきれない想いで
君の行く末を案じながらも
二度と君とは連絡を取るまいと
心に誓ったんだぜ。

もしも君と過ごした9年と言う歳月を
この手紙一つで取り戻せるなら

会わなかった1年半を
埋められるのなら
僕は何も考えない風体を装って
素直な気持ちで微笑みながら
君の手をとりにいけばいいのだろうか?

それともこのまま
埋められない溝を見つめて
もしかしたら自分が傷つく結果を
わざわざ生むために
橋を架けに行くことはないのだろうか?

弟よ。

会うべきか会わざるべきか

それが問題なのだ。

ただ それだけのことなのに。

君の真意が見えなくて

手紙を見つめながら

僕は呆然としている。


そうしていつしか問題は

僕の勇気が あるか・ないか に

いつの間にかすりかわっている。


◆2002. 7.16◆
−長年の友人に裏切られた時の話。−
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